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INTERVIEW No.01

桑野 智和TOMOKAZU KUWANO

ホグロフスフレンズ、写真家・BluebirdCanoe代表・尾瀬ガイド

写真家や、アウトドアガイドとして活動する桑野智和。夏から秋は登山とカヌー、冬から春は雪山と、四季を通じて自然と向き合っている。心にいつもあるのは静かな尾瀬の風景だと言う。そんな桑野氏に、人生の道筋を決定づけてくれた雪山との出会いや、自然への興味を与え続けてくれる尾瀬での暮らし、その魅力について話を聞いた。

大切にしている言葉

桑野さんが代表を務めるBluebird Canoeのカヌーツアー、9月初めの菅沼湖にて。

スノーボードとの出会いが、
写真家への扉を開いた

── 桑野さんはスノーボーダー、写真家、ガイドとして活躍されていますが、最初に興味を持ったのはどの活動だったのですか?

きっかけはスノーボードです。自分が大学生の頃にスノーボードの人気が出始めて、仲間達と始めました。スタートがみんな同じだったから「アイツよりカッコよく滑ってやろう」って競い合ってたんですね。そしたらだんだん面白くなってきて。その少し後くらいかな、写真を始めたのは。家に父親が昔使ってた古いペンタックスがあって、「お、コレ首からぶら下げてたらちょっと変わった奴だと思われるかな」とか思ってね。大学に持って行って友達のスナップとか撮ってました。雪山も写真も、入口は大学生っぽい軽いノリでしたね(笑)。

── でも、だんだんそのノリが真剣なものに変わってきてしまった?

「雪山で写真を撮る」っていうことを始めてからぐっと深い部分に入ったような気がします。スノーボードと写真という二つの興味が合体した瞬間っていうか。僕は実家が埼玉で、東京の大学まで片道1時間くらいかけて通っていたのですが、電車の中でよくスノーボード雑誌を読んでいたんです。そしたらそこに載ってる写真がめちゃくちゃカッコよくて。なるほどこんな仕事があるんだったら自分もやってみたいと。それでスノーボーダーを撮影し始めました。

── スノーボーダーの撮影はどこで?

冬は住み込みで尾瀬戸倉のスキー場でアルバイトしながら、空いた時間に若いライダーに声かけて撮影させてもらいました。尾瀬戸倉は当時国内最大の大会が行われる場所で、日本中からプロを目指すライダーたちが集まってくるんです。若手のライダーも写真を撮られるのは嬉しいし、僕もどんどん撮りたいしってことで、その頃は運命共同体っていうのかな? お互い夢中になって滑って、撮影して。冬の間はライダーたちと部屋をシェアして住んだり、一緒にスイスやカナダに数ヶ月遠征したり。そういうのも含めてすごく楽しかったですね。板切れ一本を持って世界中を旅する独特のカルチャーにハマりっぱなしでした。

── ライダーを撮影する魅力というのはどんなところにあるんですか?

やっぱり難しいところですかね? 自分の撮影の技術はもちろん、その日の雪のコンディションとか天候、光の具合にもものすごく左右されますし、ハーフパイプなどの競技にあたってはライダーの調子も大切でしょ。例えばハーフパイプなら一つの技で20コマくらい撮影するんですけど、たとえその技がうまくいっても、グラブや着地に失敗しちゃったら台無しで、写真も使えなくなっちゃう。雪山からの滑走の場合も、12時間かけて山に登って寒い中一泊して「さあ、朝日の中で撮影するぞ!」と思っても、天気がイマイチでとぼとぼと重いザックを背負いながら下山することもざらにあります。けど、成功した時に喜びは倍増するんです。

── めちゃくちゃ大変そうじゃないですか!

自分の力量以外の要素で左右されるのは大変ですけど、経験とか知識でその部分を克服していくという作業も僕にとっては魅力なんです。あとは技にしても雪山の滑降にしても、写真家はその日、その瞬間に立ち会っているというのが大前提でしょ。瞬間性っていうのかな、そういう部分にも強く惹かれました。

カヌーもスノーボードも、
一年中楽しめる場所だから

── 片品村の尾瀬エリアを自分のフィールドに選んだのはどうしてですか?

大学卒業時代からずっとここで雪山と写真を学んできたことが大きいですね。就職しないでこの世界で生きて行こうって決めてからは、冬はほとんど片品村の尾瀬エリアにこもっていました。最初はスノーボードの写真だけじゃ食べていけませんから、学校の記念撮影とか結婚式、なんでも撮りました。30歳くらいから夏山のガイドも始めたのですが、尾瀬は穏やかで、自分も楽しんでガイドできるところがいい。それに花があるでしょ。毎日ガイドしていても、日々違う花が咲いてくるから飽きるということがないんです。僕の仕事は冬がメインですけど、どうせなら夏も楽しみたいじゃないですか。そういう点では尾瀬は一年中自然を楽しめる最高のフィールドですね。

── それでカヌーも始めてしまったと!?

ははは、欲張りですかね(笑)? 今、菅沼でガイドをしているカヌーやカヤックは初心者でもお子さん連れでも無理なくできる、本当にエントリー向けのものなんです。菅沼は本州で最も透明度が高い湖で、カヌーの上からでも巨大なニジマスが見えたりする。森からは鹿や熊が出てきたり、珍しい草花や蝶が見られることも。何もないようで、たくさんの宝物があります。カヌー初体験の人でもそんな最高の体験ができる場所は関東近郊にそうそうないですから、ここをベースにガイドができるのは幸運だと思います。

滑り降りるラインに
人生の全てが映し出される

── これまでで一番感動した風景はどんなものでしたか?

うわー、それは難しい質問ですね。大好きなスイスの景色も最高だし、スキーヤー佐々木明君の撮影に同行したノルウエー・ロフォーテン諸島なんて、信じられないほどのロケーションだったし。でもやっぱり冬の尾瀬、至仏山と燧ケ岳でしょうね。両方とも夏場は比較的登りやすい山ですが、真冬となると山頂まで10時間以上かかるんです。そこをカメラ機材とスノーボードを担いで登って、山で一泊してライダーたちと朝日を待つんですけど、朝、最高の光の中、誰も滑っていないパウダーの上を尾瀬ヶ原に向かって滑っていく瞬間は何にも変えられない爽快感と感動があります。最高の瞬間ですね。もうみんな雄叫びをあげちゃうくらい。

── 何時間も登って、滑り降りるのは一瞬なんですよね?

そう。10時間登って、滑り降りるのは2分とか。こんなことを言うとスノーボーダーって本当にバカなの?と言われちゃうかもしれませんが、雪山を滑った後に雪の上に残る跡、ラインっていうんですけど、僕はそこにそれまでの生き方の全てが出ると思っているんです。滑る技術もそうですけど、雪質を見極める目とか、天候を判断する力、あとは勇気とかも、全部。

── 桑野さんのラインにはどんな生き方が表れていると思いますか?

「主体的な生き方」ですかね。今振り返ると、その時々に感じた「好き」という気持ちが向いている方向を選んできたからこそ、仕事もプライベートも最高に楽しめる環境に落ち着くことができたのかなと。僕は子どもの頃から生き物が好きで、昆虫とかカエル、ヘビなんかも捕まえてきては家の庭に放してたんですね。「いつもそばに生き物がいたらいいな〜」なんて思って。母は絶叫してましたけど(笑)。その自然児が高校生になって、大学も法学部とか経済学部とか就職できそうなところを選ばずに、自然のことが学べそうな地理学科に進むわけです。

── いつも心のどこかに「自然」への興味があったんですね。

それ以降はさっきお話した通りで。おかげで安定した人生とは無縁だし、失敗も多かったですけど、全部自分で選んできたことですから後悔はしませんでした。夏山ガイドでお話している動植物のこと、雪山を滑るときに欠かせない天候予測の知識など、思えば全部、若い頃の興味や経験があったからこそ身についたものですから、全部は無駄じゃなかったんだなと最近しみじみ思っているんです。自分に正直にやってきて良かった、これで良かったんだと最近になって思えるようになりました。

── では、これからの桑野さんの夢を教えてください。

とにかくまずは楽しんで滑りたいですね。30代は撮影で雪山に行くことが多かったのですが、これからはもっと自分の滑りを大切にしたいなと。ガイドも写真も自分が楽しまないことにはいい仕事はできないと思うので。あとは片品村に魅力を感じて集まってくる若い子たちをサポートしていきたいとも考えています。カヌーのガイド会社にも若い人が多いですが、夏の間に活動資金を作る仕事をどんどん提供していきたいですね。僕らが若い頃は大変だったので。そんな風にして、次の世代にもここの魅力を伝えていけたらと思っています。

スイスを代表するスノーボーダーであり親友の、フレデリック・カルバーマッテンを氷河のクレバス地帯で撮影した時のもの。© Tomokazu Kuwano

撮るのも滑るのも命がけ。移住後の目標のひとつだった谷川岳山頂のマチガ沢。© Tomokazu Kuwano

文:小林百合子
写真:相馬ミナ

プロフィール

桑野 智和

写真家・Bluebird Canoe代表・尾瀬ガイド・ホグロフスフレンズ

1975年埼玉県川越市出身。法政大学文学部地理学科卒業後、TOYOTAの撮影専用スタジオのアシスタントとして写真を学び、フリーランス写真家として活動を開始する。1999年よりプロボーダーの撮影をするようになり、国内外でスノーボードフォトグラファーとして活動。2007年より拠点を群馬に変えて、尾瀬ガイド協会の認定登山ガイドとして尾瀬や群馬の山々を案内。2012年Bluebird Canoeを設立。菅沼・丸沼・中禅寺湖などでツアーを主宰している。

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